大臣辞任など、7月末参院選に向けて、与党劣勢見通しが続いている。ではそれが為替へどう影響するのか。よく聞かれる質問だが、これで円安になるとも思わない。せいぜい円のセリングクライマックスがあるかどうかということではないか。参院選の大敗、それに伴う総理交代は98年にあった。98年7月12日の参院選で自民党は歴史的惨敗となり、その責任をとって当時の橋本総理が7月末に退陣したというものだ。
この時の円相場は、まさにセリングクライマックスとなった。140円台で推移していたドル円は、選挙後間もなくの8月11日に147円まで円安値更新となったが、そこで円安は終了。
そしてその後に待っていたのは、「98年の悪夢」相場だった。ヘッジファンド危機などを受けた信用不安の急拡大により、ドル円は10月に向けて110円へ大暴落に向かった。
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なぜ、こんな具合に与党大敗、総理交代といった政局混乱局面でも円安は限られ、むしろ円急反騰へ転じるところとなったのか。逆説的だが、そもそも円安が限界圏にあったからではないか。
この当時のドル円は、1980年代後半以降「円安・ドル高の限界水準」とほぼ一致してきた日米卸売物価基準の購買力平価よりやや円安・ドル高になっていた。つまり円安は限界圏に達していたから、政局混乱でも円売りは限られ、むしろ円は急反騰に転じたということではないか。
さて、最近の場合も円は同じく購買力平価から見て円安限界圏にある。その中では、参院選の結果がどうなろうとも、円安は限られ、反発に転じる可能性が高いということになるのではないか。 ところで、そんな円の反発は、対ドルに限らず、クロス円も含めた全面的なものになる可能性が高いのではないか。なぜなら、円安は全面的な行き過ぎ感が強いからである。
長期の移動平均線、たとえば5年移動平均線から円の総合力を示す実効相場のかい離率を見ると、98年7月の参院選で与党が大敗、橋本総理退陣となった時は、マイナス9.9%だった。それが8月には11.9%へマイナス幅が一段と拡大したものの、9月は一転して円実効相場が6%の急反発となった。
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そもそも、円の実効相場は、5年線からのかい離率がマイナス10%前後で反転するといった経験則がある。その意味では、実効相場で見ても、98年7月参院選当時、すでに円安は限界にあったから、選挙結果を受けて限界をいよいよ確認したところで急反転に向かったということだろう。
さてでは最近はどうか。6月の円実効相場の5年線からのかい離率はマイナス12.7%。つまりかい離率で見ると、98年7月参院選直後以上に円安は全面的に行き過ぎ感が強い状況にあるようだ。こういった中では、今回の参院選は、結果のいかんにかかわらず、98年の参院選の時以上に円安の可能性が限られる中にあるということではないか。日本の通貨政策の責任者である財務官が、3年ぶりに渡辺氏から篠原氏に交代した。渡辺氏は史上初の為替介入ゼロの財務官となったが、その大前提に円安基調があった。これまでの財務官交代は、為替相場の基調転換のタイミングと一致することが多かっただけに、そんな円安基調から円高へ転換することになるかも注目される。渡辺財務官の在任期間は、約3年にのぼり、最近では黒田財務官(99年7月−2003年1月)の3年半に続く長期登板となった。ミスター円と呼ばれ、大物財務官の代表的存在として知られる榊原財務官(97年7月−99年7月)の在任期間でも2年間だったことを考えると、異例の長期登板だったということになるだろう。リスクプレミアムの上昇が再燃している。それを示す指標の一つ、スワップスプレッドは、今週に入りこの間の最高を更新してきた。じつは、来週初めにかけて米大手証券ベアスターンズが、サブプライムローン絡みの損失で注目されているヘッジファンドの資産査定結果の公表を予定しており、リスクプレミムア再上昇はこれを警戒した動きと思われる。リスク回避の波及で株や為替が荒れる可能性も要注意だ。
にもかかわらず、渡辺財務官は、在任中に一度も為替市場介入をおこなわなかったという、史上初の記録も残した。ちなみに、前任者の溝口財務官(2003年1月−2004年6月)の在任期間中の介入総額は35兆円で歴代財務官の中でも最大。最大介入財務官から、一転して「ゼロ介入」財務官となったわけだ。
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このような、「ゼロ介入」をもたらした一因は為替相場にあっただろう。為替相場は、渡辺財務官就任直後こそ、2004年11月の米大統領選挙を前後して1ドル=100円に迫る円高となったものの、2005年からは円安基調に転換し、最近まで至っている。円安傾向が続いた結果、そもそも為替介入の必要性がなかったということはある。
ただし、そんな円安基調が、渡辺財務官の勇退とともに転換する可能性も注目される。過去の財務官交代は、為替相場の基調転換のタイミングと一致するといった経験則もあるからだ。スワップスプレッドは、7月10日に0.6753%まで拡大した。この間の最高は、6月29日に記録した0.6411%だったが、それを大きく更新してきたわけだ。これは、リスクプレミアム上昇が再燃していることを示している。
では、なぜここに来てリスクプレミアムが再上昇しているのか。どうやらあらためて「サブプライムの影」におびえているということが大きいのではないか。
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じつは、ベアスターンズは、サブプライムローン関連の損失で注目されている傘下の2つのヘッジファンドに関する5月末時点の資産査定結果を、7月16日までに公表することを予定している。
さらに、サブプライムローンの関連証券(CDO)の資産価値が6月に入ってから急落したことを受けて、6月末時点の資産査定結果についても公表できるように努力するむねを伝えている。
CDOについては、実態から大きくかい離した「上げ底」評価となっており、その「化けの皮」がはがれれば、評価損の連鎖懸念が急拡大するリスクが警戒されている。つまり、ベアスターンズがいよいよ「パンドラの箱」をあけることになるかもしれない、それを警戒する動きがリスクプレミアム再上昇を後押ししているようなのである。今週に入ってからNY債券相場は一時急上昇、10年債利回りは大幅な低下となったが、この主因はリスクへの警戒感再燃に伴うリスク回避があったようだ。
「注目されているベアスターンズ傘下のヘッジファンド以外のヘッジファンドでも巨額の損失の噂が流れていた」といった情報もあり、そういった中での質への逃避が債券高・金利低下を後押しした面も大きかったようだ。
そんな債券に比べると、比較的反応が鈍い状況が続いていた為替・株だったが、ともに10日NYでは、株急落、ドル急落となった。サブプライムローンの格付け引き下げニュースに反応したものだが、背景にリスク回避の必要性があったことは重要だろう。
クレジット・リスクは、流動性が細る夏休みシーズン、7−9月期が要注意といった指摘は少なくない。97年のアジア通貨危機、そして98年の大手ヘッジファンド危機などは、まさに7−9月期に表面化したものだ。
そんな「危ない季節」を乗り切ることができるか否か、それを考える上で、今週から来週にかけての動きは「第一関門」といった位置付けになりそうだ。円の総合力を示す実効相場が、とくに実質ベースで1985年プラザ合意以前、20年以上ぶりの安値圏まで下落してきた。ただそんな実効相場も、長期移動平均線からのかい離で見ると、いよいよ円安行き過ぎ危険域に入ってきた。過去のパターンからすると、いつ一ヶ月で5−10%のドル急落、円急反騰が起こってもおかしくない段階にあり、逆説的にいえばそんな急変により円安終了が確認されることとなりそうだ。 日銀が発表している円の実効相場は、実質ベースが6月で85.7となり、ついにプラザ合意があった85年9月以前、85年7月(93.1)以来の安値圏まで下落した。また、名目ベースでも6月は273.6となり、1ドル=147円の円安・ドル高を記録した98年8月(258.5)以来、約9年ぶりの水準まで下落した。
このように、10−20年ぶりの水準まで円の総合力が下落すると、下げ止りの目安をみつけるのも難しくなってくる。ただし、長期移動平均線とのかい離で見ると、少し違った風景が見えてくる。結論的にいうと、長期移動平均線からりかい離率は、円の実効相場も円安行き過ぎ限界圏に突入し、いつ急反転が起こってもおかしくないことを示している。
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たとえば、円の実質実効相場の5年移動平均線からのかい離率は、6月はマイナス20.17%となった。これまでは、同マイナスかい離率が15%以上になると円安も終了、間もなく円急反発に転じてきた。その意味で、マイナスかい離率15%以上は円安の行き過ぎ圏で、最近はまさにそんな領域で推移しているということになる。
ちなみに、過去30年間で、同マイナスかい離率が15%以上となったのは、現在の局面を除くと7ヶ月しかなかった。これらの円安行き過ぎは、すべて一ヶ月でドルが10%前後の急落、円急騰となることで一巡となってきた。
これは、名目実効相場で見てもほとんど同じだ。名目実効相場の、5年線からのマイナスかい離率は、この6月で11.4%となった。過去30年間を見ると、同マイナスかい離率が10%前後になると円安は終了し、円は急反騰に転じてきた。つまり名目実効相場の場合、マイナスかい離率10%前後が円安行き過ぎ圏といえるが、現在はまさにその領域にあるわけだ。
ちなみに、同マイナスかい離率がこの6月と同じく11%台を記録したのは97年4月と98年8月の2回しかなかったが、この2回とも翌月にかけて10%前後のドル急落、円急騰が起こっていた。
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